2008年11月21日 (金) | 編集 |
法廷へ 課題克服誓う地裁
視聴覚障害者が裁判員になったら・・・
手話で声色どう伝達
見取り図説明に難しさ
耳の聞こえない人や目の見えない人が裁判員に選ばれたら……。来年5月から始まる裁判員制度に向け、富山地裁はあらゆる場合を想定した準備を進めている。18〜20日の模擬裁判では、初めて障害者が傍聴した。障害を理由にして裁判員候補から障害者を外すことは基本的になく、今回の傍聴で多くの課題が浮かび上がった。
富山地裁1号法廷。一段高くなった裁判員席の横から、小中栄一さん(54)は裁判を見た。小中さんは県聴覚障害者協会の事務局長。自らも耳が聞こえない。通訳士の手話を通じ、被告人質問などを約1時間半、傍聴した。
傍聴を終えた小中さんの第一声は「会話のテンポが速くて、ついていくのが大変だった」。裁判の大きな流れは理解できたが、手話で細かいやりとりを追うのは困難だった。手話では被告人の声色までは伝わらないため、「本当に反省しているのかどうか、判断が難しい」。
手話通訳士も悩んでいた。今回は2人が15分交代で通訳したが「疲れて、細かいニュアンスに気を配る余裕がなくなった」。被告人質問や証人尋問は1時間近く続くこともある。「手が動かなくなり、2人で3日間を担うのは無理がある」という。県手話通訳士会の高道恵美子会長は「短い言葉でも、ニュアンスを表そうと意訳すると、自分の主観が入ってしまう。重要な証言で誤解を生むと大変なことになる」と不安を口にした。
視覚障害がある県視覚障害者協会の塘添(とう・ぞえ)誠次さん(59)は、傍聴席で裁判を聞いた。
裁判の最初にある冒頭陳述。検察側も弁護側も大型ディスプレーを使い、一般の裁判員に分かりやすい方法を目指した。だが塘添さんにはディスプレーが「一番分かりづらかった」。検察側は事件の現場を見取り図で表したが、裁判員に視覚障害者がいる場合は、言葉で言い換える工夫が必要だ。塘添さんは「図を説明する際の『これ』などの代名詞をいかに減らすかが大事」と指摘する。また、裁判員に配られる多くの資料の内容をどう伝えるかも大きな課題だ。
今回の傍聴は、同地裁が10月に障害者施設を訪問したことがきっかけで実現し、障害者にどのような配慮が必要なのかを把握するのが目的だった。同地裁総務課の藤田一治課長は「今回分かった課題をもとに、検察や弁護士も含めて準備をしていかないといけない」と話す。
初めて傍聴した小中さんは「裁判は難しいイメージを持っていたが、誰もが参加できるレベルと思った。人を裁くという場に、障害者も一緒に参加できるのは非常に大事なこと。課題はすべて克服できるものだと思う」と話した。
(朝日新聞 - 2008年11月20日)
視聴覚障害者が裁判員になったら・・・
手話で声色どう伝達
見取り図説明に難しさ
耳の聞こえない人や目の見えない人が裁判員に選ばれたら……。来年5月から始まる裁判員制度に向け、富山地裁はあらゆる場合を想定した準備を進めている。18〜20日の模擬裁判では、初めて障害者が傍聴した。障害を理由にして裁判員候補から障害者を外すことは基本的になく、今回の傍聴で多くの課題が浮かび上がった。
富山地裁1号法廷。一段高くなった裁判員席の横から、小中栄一さん(54)は裁判を見た。小中さんは県聴覚障害者協会の事務局長。自らも耳が聞こえない。通訳士の手話を通じ、被告人質問などを約1時間半、傍聴した。
傍聴を終えた小中さんの第一声は「会話のテンポが速くて、ついていくのが大変だった」。裁判の大きな流れは理解できたが、手話で細かいやりとりを追うのは困難だった。手話では被告人の声色までは伝わらないため、「本当に反省しているのかどうか、判断が難しい」。
手話通訳士も悩んでいた。今回は2人が15分交代で通訳したが「疲れて、細かいニュアンスに気を配る余裕がなくなった」。被告人質問や証人尋問は1時間近く続くこともある。「手が動かなくなり、2人で3日間を担うのは無理がある」という。県手話通訳士会の高道恵美子会長は「短い言葉でも、ニュアンスを表そうと意訳すると、自分の主観が入ってしまう。重要な証言で誤解を生むと大変なことになる」と不安を口にした。
視覚障害がある県視覚障害者協会の塘添(とう・ぞえ)誠次さん(59)は、傍聴席で裁判を聞いた。
裁判の最初にある冒頭陳述。検察側も弁護側も大型ディスプレーを使い、一般の裁判員に分かりやすい方法を目指した。だが塘添さんにはディスプレーが「一番分かりづらかった」。検察側は事件の現場を見取り図で表したが、裁判員に視覚障害者がいる場合は、言葉で言い換える工夫が必要だ。塘添さんは「図を説明する際の『これ』などの代名詞をいかに減らすかが大事」と指摘する。また、裁判員に配られる多くの資料の内容をどう伝えるかも大きな課題だ。
今回の傍聴は、同地裁が10月に障害者施設を訪問したことがきっかけで実現し、障害者にどのような配慮が必要なのかを把握するのが目的だった。同地裁総務課の藤田一治課長は「今回分かった課題をもとに、検察や弁護士も含めて準備をしていかないといけない」と話す。
初めて傍聴した小中さんは「裁判は難しいイメージを持っていたが、誰もが参加できるレベルと思った。人を裁くという場に、障害者も一緒に参加できるのは非常に大事なこと。課題はすべて克服できるものだと思う」と話した。
(朝日新聞 - 2008年11月20日)
| ホーム |
