2008年11月18日 (火) | 編集 |
裁判員制度 健常者と「情報格差」、障害者の参加に課題 /神奈川
◇進まぬ資料の点字化、手話もモニターも「負担」
来年5月スタートの裁判員制度に向け、目や耳に障害のある人が裁判員として参加する模擬裁判が今月、横浜地裁では初めて開かれた。公判資料の多くが視覚障害者向けに点字化されてはおらず、聴覚障害者は手話通訳と廷内モニターを同時に見なければならなかった。健常者の裁判員との「情報格差」が課題として浮き彫りになった。【池田知広】
「だから、見ても分からない人がいますから」
大島隆明裁判長が若手検察官に声を荒らげた。強盗傷害事件の模擬裁判(6、7日)。被害者の「右鎖骨部上腕部挫傷」というけがについて、裁判長が「口頭で分かりやすく説明して下さい」と言ったのに、「この部分です」と腕をさすったからだ。全盲のしんきゅうマッサージ師、志子田正浩さん(41)が裁判員席に座っていた。
検察、弁護側とも口頭説明に力を入れたが、「資料を点字にしてもらえたら頭の疲れも少なかったと思う」と志子田さん。判決を決める評議で、他の裁判員5人は手元の資料を見ながら意見を言えたが、志子田さんは2日間の審理の記憶をたどるしかなかった。地裁は点字翻訳機導入を検討中だが、最高裁は「裁判員裁判は口頭のやりとりが中心なので、証拠書類の点訳は特に必要ない」という。
耳が不自由な県聴覚障害者連盟理事、海老塚一浩さん(42)は放火事件の模擬裁判(13、14日)で、手話通訳を頼りに審理に参加。だが裁判長の判決読み上げが速くて追いつかず、通訳者が待ったをかける場面もあった。
健常者が聞いて理解しやすいように、冒頭陳述要旨など重要な資料は廷内のモニターに表示された。海老塚さんは「手話とモニターを同時に見るのは非常に苦しかった」と漏らす。
同時手話通訳した木村誠さん(54)も「内容を理解して初めて通訳できる。3日前から資料を読みっぱなしだった」と負担の大きさを語った。手話通訳を派遣する県内3カ所の情報提供施設も、こうした技量のある人を確保できるか不透明だ。
裁判員法によると「心身の故障のため職務の遂行に著しい支障がある者」は裁判員になれない。例えば写真が重要証拠となる公判では視覚障害者は選ばれない可能性もある。海老塚さんは「障害者の参加権を、どう保障するかが重要」と指摘した。
(毎日新聞 2008年11月17日)
◇進まぬ資料の点字化、手話もモニターも「負担」
来年5月スタートの裁判員制度に向け、目や耳に障害のある人が裁判員として参加する模擬裁判が今月、横浜地裁では初めて開かれた。公判資料の多くが視覚障害者向けに点字化されてはおらず、聴覚障害者は手話通訳と廷内モニターを同時に見なければならなかった。健常者の裁判員との「情報格差」が課題として浮き彫りになった。【池田知広】
「だから、見ても分からない人がいますから」
大島隆明裁判長が若手検察官に声を荒らげた。強盗傷害事件の模擬裁判(6、7日)。被害者の「右鎖骨部上腕部挫傷」というけがについて、裁判長が「口頭で分かりやすく説明して下さい」と言ったのに、「この部分です」と腕をさすったからだ。全盲のしんきゅうマッサージ師、志子田正浩さん(41)が裁判員席に座っていた。
検察、弁護側とも口頭説明に力を入れたが、「資料を点字にしてもらえたら頭の疲れも少なかったと思う」と志子田さん。判決を決める評議で、他の裁判員5人は手元の資料を見ながら意見を言えたが、志子田さんは2日間の審理の記憶をたどるしかなかった。地裁は点字翻訳機導入を検討中だが、最高裁は「裁判員裁判は口頭のやりとりが中心なので、証拠書類の点訳は特に必要ない」という。
耳が不自由な県聴覚障害者連盟理事、海老塚一浩さん(42)は放火事件の模擬裁判(13、14日)で、手話通訳を頼りに審理に参加。だが裁判長の判決読み上げが速くて追いつかず、通訳者が待ったをかける場面もあった。
健常者が聞いて理解しやすいように、冒頭陳述要旨など重要な資料は廷内のモニターに表示された。海老塚さんは「手話とモニターを同時に見るのは非常に苦しかった」と漏らす。
同時手話通訳した木村誠さん(54)も「内容を理解して初めて通訳できる。3日前から資料を読みっぱなしだった」と負担の大きさを語った。手話通訳を派遣する県内3カ所の情報提供施設も、こうした技量のある人を確保できるか不透明だ。
裁判員法によると「心身の故障のため職務の遂行に著しい支障がある者」は裁判員になれない。例えば写真が重要証拠となる公判では視覚障害者は選ばれない可能性もある。海老塚さんは「障害者の参加権を、どう保障するかが重要」と指摘した。
(毎日新聞 2008年11月17日)
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